世界規模で環境保護が叫ばれていますが、二十数年も前より環境に目を向け、仕事を通してエコロジーに取り組んでおられる一建築士がいます。矢上五郎八、“ごろはち”は本名! その名のイメージ通り、一風変わった発想力をもったユニークな人物が、発信するものとは…

矢上さんが造る「地熱住宅 五郎八の家」は特許(特許番号 第4118976号)を取得されていますね。家そのものの工法自体で取得されているのは、ほとんど例がないといっても過言ではない珍しいことだと思うのですが、まず、その地熱住宅について教えてください。

ひとことで言うと外断熱工法で、夏は涼しく、冬は暖かいという「嘘のようで本当の話」なんです。「地熱住宅」について仕組みを簡単に表現すると、地中には一年中13℃~15℃で安定した地温があります。この安定した地温をうまく建物の中に取り入れた工法ということです。

私たち一般人にとっては、一年中、冷暖房なしで生活できる快適な住宅といっても、すぐには信じがたいですが、私も現地に案内していただき、実際に暮らしておられる方々にお話を聞いたところ、住民の方が喜ばれていましたね。現実にそんな住宅に大勢の方が生活されているのですね。

井戸水が夏は冷たく冬は温かく感じますが、これはまさに地温によって年中一定の温度に保たれている証拠です。
また、夏に鍾乳洞や洞窟に入られた方は、内部が涼しかった体験をされたと思います。これが安定した地温というものです。

実際に暮らしておられる方が、真夏でも、ほとんどクーラーは使用しないでいいし、特に冬は家中全体が14℃くらいに安定しているのでお風呂あがりなど急な寒さに震え上がることがないと言っておられました。

小さな子どもさんや、老人には最適でしょう。特に高齢者は急な温度差によって倒れる方が多いですから。それに、住宅が消費する熱エネルギーを大幅に減らすことが地球温暖化の防止に役立ちます。環境は大きな問題です。

地熱住宅を発表したのは1994年ですね。

97年に実用新案取得、翌年には名古屋や京都の建築家や大工の棟梁ら4人でドイツのハノーバーまで渡り、著名な毒物学者ウラ・エガース博士に室内化学物質が人体に影響を及ぼす旨の講義を受けてきました。そして、2000年には、ひと・環境計画を主宰するエコロジー建築家・高橋元氏に同行してドイツに視察、エコロジー建築家ホルガー・ケーニッヒ氏の講義も受けました。

そして、2008年2月29日、特許庁から「地熱を利用して、一年中、暖房を使用せず快適な室内空間が保たれる木造の建築工法を発明したこと」で特許を取得されました。建築の部品・部材の特許や実用新案は比較的簡単に取得できても、建築工法の特許取得は珍しいそうですが…

特許取得の理由は次の3点です。まず類似の考えがなかったこと。工期の短縮と工費の軽減が可能そして環境をテーマに考慮した。25年ほど前から木造建築にこだわり、一年中ほぼ一定した地熱を利用して、“夏涼しく、冬暖かい”断熱工法の住宅を造ることに取り組んできました。人が生きていく上で、建築物の室内空間は大切なものです。

新聞をはじめ、各マスコミでも取り上げられてますね。特許取得以前より「地熱住宅 五郎八の家」は、クチコミで広がり70棟以上の施工をされていますね。

個人の住宅はもちろんですが、病院や老人施設などにも向いているようで注文は多いですね。相生市大谷町1-20に、小規模多機能型居宅介護施設(グループホーム)さくらホーム「おおの家」を建てましたが、そこは、地元・相生産の「杉材」を使用し、浴槽は桧風呂。快適な空間となりました。
工法が認められ特許取得したことは、仕事の後押しをしてもらうことにつながってきます。全国的にも、鹿児島・宮崎・熊本・福岡・広島・愛媛・岡山・兵庫・大阪と、地熱住宅「五郎八の家」普及会支部ができ、福岡県太宰府市の近くでは、事務所も開設されました。

「おおの家」のオープンハウスは大盛況でしたね! いい気を感じた、癒されたなどの声がたくさん聞かれましたし、特に桧風呂は大人気(笑)

メーカーが商品化している工業製品の湯船を採用せず、桧材を使用して新しい工法で、むく材の桧で桧風呂を製作、地元密着型の高齢者施設なので建築物も地域密着型を採用し地元相生産の「杉材」を柱・梁・母屋・垂木・床・天井・腰板・手作り家具などありとあらゆるところに多用、家具は全て手作りとし、仕上げは人体に害が無いドイツの環境を配慮した 建材等を紹介する権威のあるエコテストマガジンにも紹介されているオイル蜜蝋ワックスで最終仕上げをしました。
今回、ご縁をいただき高齢者の介護施設である小規模多機能型居宅介護施設の設計監理をさせていただきましたが、私は今までにこのような高齢者介護施設を設計したことがありませんでした。
私の手法は何時もそうですが始めての経験の無い建築物の依頼が来たときには同様の建築物を参考に見に行くことはしません。なぜなら、その建築物が気に入ればそれがゴールになるからです。私が経験してきたことや思考を駆使してそして、それを利用する方々の「魂」が本当に喜びを持つ建築物とは何か?が私のライフフワークだからです。そんな中でこの高齢者の施設を設計いたしました。

このような高齢者が利用する施設の建築が全国的に続いてますが、地熱住宅は最適ではないかなと私は思いますね。

特許取得地熱工法は高齢者にとっては最高の住空間といえますね。高齢化になると血管が硬化し始め室内の温度差により血管が対応できなくなり、その結果「脳血管障害」を引き起こしやすくなるので…

最後にお伺いしますが、一級建築士として矢上さんは地熱住宅以外の注文は受けないのですか?

それを望むなら、僕でなくてもいいでしょ!?(笑) 僕は、自分が自信をもっていいと思うものを建て、それを体感してもらいたいからね。お金儲けのためだけに仕事があるのではないんです。それをしたら「ものづくり」でなく「もの売り」になる。僕は職人ですから…

“ほんもの”は、こうして自然に人々の声や手によって広がっていくという例を見る思いです。矢上さんが代表のエコロジー住宅研究所ダンライフのホームページには、施工例はもとより、「CaFe 568」のコーナーもあり、エコに関する思いや人生の哲学など思いのままに綴られています。ちょっとコーヒーでも飲みながら立ち寄ってみてはいかがでしょう?




DATA 「五郎八の家」で検索 http://www.chinetsu568.com/