神戸は、欧風家具の日本発祥の地といわれています。長年、家具職人たちで、世代を超えて親しまれる「百年家具」を生み出しておられる牧本木工所を訪ねてみました。
神戸家具の発祥について、初めに教えてください。
ご存知のとおり、神戸は開港によって貿易が栄え、たくさんの外国人が住むようになりました。そこで、その暮らしによって必要となり生まれたものです。海を越えて持ち込んだ西洋家具の補修がはじまりだと聞いています。神戸の船大工さんや家具職人らが補修だけでなく製作するようになっていくのですが、日本人は丁寧な仕事をするので、品質もよく、外国人たちにも認められたということでしょう。
ヨーロッパの繊細なデザインが、神戸住民にとっても新鮮で、お洒落なことから定着し広がったのでしょうね。ここの神戸木工センター入り口のところに「洋家具発祥の地」とありましたが…?
もとは、そういうことで三宮の居留地の東あたりに、家具製造所が集まっていました。生田家具とも葺合家具とも呼ばれていましたね。だんだんと三宮が繁華街となっていったこともあって、市が、ここに木工センターを開設しました。いまでは、10社ほどになりましたが、当時は50社くらいが移転して集合したのです。
牧本木工所は、昭和23年創業より職人たちが、一つ一つに心を込めて家具を生み出しています。
神戸家具の発祥は、明治時代ですから、そのなかで言えば新しいといえますが、時代の流れとともに、婚礼家具を揃えるというような習慣が変わったことや、住宅事情などから家具屋さんの閉店も続き、今では、残念なことにその数は少なくなってしまいました。うちが、そのなかでも、こうして続いてきたのは、お店を構えなかったということが大きいでしょう。家具を店頭販売するのには、かなりのスペースが必要ですから、コストが合わなくなってしまいます。創業以来、下請けを中心に職人が家具の補修・製造をしてきましたが、平成13年に、現在地に新工場を建てた際に2階にショールームを作りました。ここで、手造りの家具を実際に見て、触れてもらって、ほんものの良さを感じてもらっています。
100年は保つ無垢の手造り家具の伝統を守り育てておられ、「100年家具」をキャッチフレーズに掲げておられますね。
まず、扱う木材は、100年以上生きた無垢材。そして、それを100年は使えるものをと心を込めて作っています。100年生きた木材を3年間寝かせ、反りや木目などを見ていきますが、そのなかで使用するのは約6割ですね。厳しい選択によって見出した木の、微妙な柔らかさや固さを感じ取りながら、職人がカンナとノミで、ほぞ組に仕上げていきます。職人の技と勘で、世界に唯一の手造り家具が誕生するというわけです。そして、長く使えば使うほどに、その威力は発揮されるんですね。味わいと愛着がもたれて百年家具になります。そのためにも、うちでは、職人一人一人に責任を持たせ、一貫した仕事を任せています。注文から図面を起こし完成まですべてを一人で担います。やはり、造るという喜びと責任感が違ってきますからね。
それこそマイスターですね。皆さん、やりがいもあるでしょうね。
もともとデパートなどの下請けメーカーでしたので、ブランドメーカーを目指し「100年家具」に力を注いできました。家具は無垢にシフトして洋家具のなかでも、オランダのルスティックな田舎風な感じです。家具は道具だと私は思っています。例えば、乱雑に扱っても、傷がついても価値が落ちないというものでなくてはと。それだけにしっかりしたもので安心して暮らせ、デザインも飽きがこず、生活に馴染むものでないといけません。
ショールームでは広いので、実際に自分の家に入れたイメージと違うという失敗など、私もあるのですが…(笑)
そうですよね!(笑)家具屋さんは天井も高いですし。でも、オーダー家具ですから、寸法も測りますし、ショールームの家具を見ながらデザインや用途など、希望を十分に言ってください。相談のうえに、注文したいとなれば、図面の作成と同時にお見積もりさせてもらっています。
優れた家具を、修理も可能ですし気を使わずに長年使用できることを考えると、価格もそう高いとは思いませんね。
長年、使用できる家具というのは、単に販売だけでなく、その家族の皆様とのお付き合いにもつながってきます。なにより私たちは、それが嬉しいですね。仕事とは、そういうものだと思います。これからも人とのつながりは大切に仕事をしていきたいですね。
ショールームを会場に「ぬくもりコンサート」などをしているのも、そういう人間同士の関わりを大事にされておられることからですね。
地域のコミュニケーションの場として開放しています。ものづくりをしている若い作家さんたちは発表の場が経済的に厳しい人も少なくないので、そういう場合には無料でスペースを貸し出し展示会を開いたりしています。例えば、陶芸などの器やオブジェなどを展示したりテーブルコーディネーターすることで、どういうふうに生活していくのかが見えてくるとも思いますしね。40~50人は入れるので音楽コンサートなどでは老人ホームの方たちをご招待させてもらったりもしました。そうすることで、私たちも、家具を見てもらえるという喜びもありますし…単なる倉庫にしたくないなと、ギャラリーとして5年くらい前から開放しています。
やはり、しっかり理念をもっておられるのですね!!
資源を大切にしていかないと、これからの時代はありません。これは、大きな社会問題です。弱いところに”ごみ”が行くのです。そこをしっかりと住民は考えていかないといけませんよね。土壁や、無垢の家具、ほぞ組、日本の自然の建築物、そういう”環境”も考えていかないと、今からは生きていけないですよ。仕事を通して、次の資源を無駄に使わなくてすむというのも100年家具の思いの一つです。
紹介されている出版物を見させていただくと、欧風デザイン以外に現代的なデザインもあるのですね。
暮らしをトータル的に仕上げることも可能です。クラシックに限らずモダン家具も対応していますし、システムキッチンなどのオーダーもお受けしています。
ありがとうございました。既成の家具の修理や修復も応じているということからも、本当の意味で社長さん自身が家具を愛する家具職人なんだなぁと痛感! 人の手によって造られた家具は使い手によって歴史が刻まれていく… そうして、オーダー家具は年月を重ねるほど“いい表情”になる。それは心をも豊かにしていき、家族の表情もよくなるに違いないと思います。